コミュニケーションを作る家具
―rhythm tribeの店舗にある椅子を制作したとか。
新店舗のベンチについても矢嶋さんから話をもらった時に是非作らせて下さいと二つ返事しました。
前々から矢嶋さんといつか一緒に何かやりたいねと話していたので、その第一歩という感じですかね。
イメージは矢嶋さんにもらった画像を元に少しアイディアを付け足して、ナムロックのロゴを切り抜き、内側に電球を入れてみました。
炎がメラメラゆらいでるタイプの電球を使用したことによって、矢嶋さんの内面に秘める熱い部分を表現してみました。
もう1つはベンチの中にスケボーのタイヤを格納してます。一人でも簡単に移動させることが出来る様に細工してみました。
以前の八重咲町の店で置いていた椅子は一番最初に作った椅子です。
お米屋さんに置いてあった長い木があって、使っていなかったものを頂きました。面が味があるので、そのまま使いたいと思いました。
張り込みといって、玄米を精米するときに機会へ流し込みするときに使ってる木なんです。使い込まれていて米の油で見た目もとてもいい味を出していて。
ーー作るきっかけは?
3年前くらいですかね。矢嶋さんと出会ったのは前の店の頃からなのですが、こういうことがやりたいんだという話をしていたら、じゃあ作ってみてよ、って。こういうの作って欲しいって言われたような流れだったと思います。それで作ってみようって。
ーー店舗に欲しいという問い合わせもあるとか。
お店にあると、声をかけてもらえたりもするみたいです。矢嶋さん経由で見てもらったり、声かけてもらったりするのは嬉しいです。色んな人に知ってもらって使って欲しいですから。
ーー椅子ことで会話やコミュニケーションが生まれる。〈rhythm tribe〉のお客様の中にも購入した方がいるとか。
納期とかは結構時間もらってしまっているんですが、いいものを作りたいと思ってます。大量生産じゃなく、ひとつひとつ手作業で試行錯誤して作っていこうというのがコンセプトです。
ーーもともと作るのが好きだった?
祖父が大工だったんです。家も祖父が建てたもので。ただ、僕が物心着く前に亡くなったので、何か直接聞いたりした訳ではないのですが、大学時代などは大工ってかっこいいなとずっと思ってました。
モノ作りは好きでしたが、高校から寮に入っていて、ずっとサッカーをやっていたのもあり、当時はなかなか作るまでに至りませんでした。
けど、今働いているところの社長と作りたいという意見が一致して。
社長はアメ車やハーレーなど好きで、自分でなんでも作ってしまうような方です。今は僕と社長2人でやってます。会社に工場があるんですけど、そこに機材を置いたりしています。
運搬用のパレットが工場で山積みになっていたのを見つけて、聞いたら処分するということだったんです。なので、それ使わせてもらって作ったりするようになりました。
ーー作品の特徴やこだわりは?
なるべく金物をいれないで、木材本来の暖かさを出したいと思っています。組み木というんですが、できるだけ削って入れ込んで組み立てています。
ーーいしい茶園の椅子も制作したとか。
今は知り合いから依頼されて作っているような感じで、石井さんにも「ケイスケ作ってくれないか」と言っていただきました。いしい茶園にウッドデッキに置く座椅子を作って欲しいと。茶園の風景を楽しめるような場所に置いてもらっています。
ーー副業で2足のワラジとなると大変?
楽しいですよ。なにもない普通の木から、時間と手間をかけて形を変えていく作業は面白いです。持っていく時は、なんだか手放したくないと寂しい気持ちになりますね(笑)。
少しずつ広めていけたらいいです。これをバンバン作って、自分の収入を増やしたいというよりは、ちゃんといいものを作っていきたいです。
PROFILE
井ノ上敬介(いのうえけいすけ)/幼少から大学時代までサッカーに打ち込む。大学卒業後、オーストラリアに2年、カナダに1年ほど留学。DJなども経験がある。戻って現在の仕事の傍ら「家具のきりん」で作品制作を行う。
家具のきりん instagram/giraffe_woodworking
取材・文/満山雅人